私はインドネシアで生まれ、日本で介護職として 10 年以上働いてきました。日本の食文化、生活リズム、働き方、そして人との関わり方に触れながら、「自分も日本の方々のように長生きできるのだろうか」と考えることがあります。
インドネシアの平均寿命(期待寿命)は、ここ数年順調に伸び続けています。インドネシア中央統計局によると、2024 年の平均寿命は 74.15 歳とされ、2025 年には約 74.47 歳に達するという予測もあります。平均寿命とは、国全体の生活の質を測る重要な指標の一つであり、人々がどれだけ長く健康的に暮らせるかを示しています。
この数字が改善している背景には、医療サービスの向上、経済の安定、健康志向の高まり、そして政府による福祉施策など、さまざまな要因が関係しています。
しかし、こうした前進が見られる一方で、日本と比較するとまだ大きな差があることも事実です。世界保健機関 (WHO )の発表では、日本の 2025 年の平均寿命は 84.3〜84.8 歳と推計され、別の資料では 85.27 歳という数字も示されています。日本が長年にわたり世界有数の長寿国として知られている理由には、食習慣、医療制度、生活環境、そして文化的な価値観が深く関わっていると言われています。
特に注目すべきなのは、100 歳以上の高齢者の多さです。2025 年 9 月時点で、日本の百寿者(センテナリアン)は約 10 万人に達し、その 88%以上を女性が占めています。これは、日本の生活様式が長寿に大きく影響していることを示す象徴的な数字だと感じます。
医療制度が整っているだけでなく、日本では高齢期になっても「自然に体を動かす」仕組みが日常に根付いています。歩く距離が長いこと、公共交通機関を使う生活スタイル、地域とのつながりなど、どれも特別なことではなく、日々の生活に溶け込んでいます。

私が働く介護施設にも、(歩行器)を使いながら99歳で元気に歩いていらっしゃる入居者様がいます。その姿勢の良さ、歩幅の安定、そして何より「まだ自分で歩きたい」という意欲には、毎日学ばされることばかりです。
一方で、インドネシアでは 60 歳以上が「高齢者」とされ、加齢に伴い病気にかかりやすくなる傾向が強く見られます。生活環境、医療アクセス、運動習慣など、いくつもの要因が健康寿命に影響を与えているように思います。
日本で長年介護として日本の高齢者と接して来て結論として感じているのは、日本の長寿には “ひとつの秘密” があるわけではなく、いくつもの要素が積み重なり、長い年月をかけて育まれているということです。
例えば、バランスの取れた食事、適度な身体活動、地域とのつながり、生きがいの存在、そして安心して医療を受けられる環境――。
これらは、どれも特別なことではありませんが、日本の人々が日々の生活の中で自然に続けていることばかりです。


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